牧野 真耶

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8/22/2023

猫との暮らし

今年の5月から猫と暮らしている。

彼女は野良猫だったのだが、一年ほどうちにほぼ毎日通ってきていた。
中途半端に手を出すのは無責任だとずっと無視していたのだが、懲りずにうちの庭で虫取りをしたり日向ぼっこをしたり、窓越しに食べ物をおねだりしたりしていた。仲の良い他の猫達と一緒にパトロールをしたり、ベランダで毛繕いをしたり、私を見ては甘えるような仕草をしたりしていた。

昨年夏に子猫を連れ立ってきた時は心が揺れた。
保護すべきではないか。
食べ物だけでもあげた方が良いのだろうか。
雨をしのげるところはあるのか。
心配でたまらなかったが、ペット飼育不可物件の住まいだったため、心を鬼にして一切無視していた。もちろん餌も与えなかった。

毎日来ていた猫親子だったが、数日ごとに子猫の数が減っていった。自然界の厳しさについていけず命が尽きた子もいたであろうし、もしかしたら保護してくれた人がいたかもしれない。
数ヶ月すると子猫達は独り立ちの時期になり、母猫のみが相変わらず毎日うちに顔を出していた。

そして私は彼女の根気に負けた。

保護することを現実的に計画し、夫とともにできる限りのお世話を始めた。最初から人懐っこい猫だったが、触らせてはくれなかった。保護するタイミングを計りながら彼女との時間を過ごしていたが、最終的な決心がつかぬまま数ヶ月たち、再び彼女は妊娠した。

これは私の責任である。
保護を先延ばしにしたことで招いたことだった。出産して子猫達が独り立ちしたら今度こそ彼女を保護しようと、一度はそう決めた。しかしすぐに彼女は助けが必要だった。ワンオペで子育てをしながら自然界を生き抜くにはあまりに過酷すぎる状況を目の当たりにし、子猫も含む全員を保護することに決めた。

彼女はとても頭が良く日本語が通じる。
ケージやトイレなど一緒に暮らしていく上で必要なものを揃え、毎日彼女に見せた。
「あなたのお家だよ。」と毎日伝えた。
5月のある日、子猫を一匹ずつうちに連れてきて自らケージに入った。子猫は全部で3匹。私達はいきなり4匹の猫の親になったのである。

保護をしてすぐに動物病院に連れて行き、必要な処置をしていただいた。子猫達は猫風邪をひいていたため、看病が必要だった。それに加え離乳期であったため、離乳食を作って食べさせたり、重要な社会化期を見守ったりと、嵐のような1ヶ月を過ごした。
幸い子猫達は信頼できる里親さんの元へ託すことができ、母猫と私たちの暮らしが始まった。
それに伴いペット可の物件への引っ越しやマイクロチップの装着など、やらなければならないことが山積し、作品の締め切りも切羽詰まっていたが、育猫ノイローゼ気味になりながら完走した。

私は彼女達を助けたが、それを実行するために多くの方々からの助けがあった。
ペット飼育不可の物件にも関わらず、猫達の命を優先して対応してくださった不動産会社には感謝してもしきれない。それがなかったら保護することは限りなく難しかったであろう。新居もその不動産会社が紹介してくれ、子猫達の里親探しに関しても協力があった。
動物病院の先生は保護猫ということで配慮してくださり、子猫の世話についても丁寧にアドバイスしてくださった。子猫達が全員生き延びて健康になったのは先生と看護師の方々のおかげである。

現在は無事に新居へ移り、夫と猫と3人で暮らしている。
猫は住まいが変わると強いストレスを受けると聞いていたためとても心配していたが、日当たりが良く自由に動ける範囲が増え、すでに快適そうに過ごしてくれているので安心している。

猫を飼うのはこれが初めてのことで、彼女が幸せに暮らしていけるように日々勉強しながら過ごしている。
自由に外へ行くことはできなくなったが、食べ物や寝床、天気、他の動物から襲われたり事故に巻き込まれる危険を心配することなく、安心して少しでも長く一緒に暮らしていってくれたらと願っている。